
長谷川了編 我観 第85号 我観社 昭和5年12月1日 152頁 A5S 85銭
何国の歴史も当初兵力を以て威圧し、秩序を維持するに汲々とし、其の秩序を維持するは、自家を安全にするに過ぎざるが、漸く秩序を維持し、手に束ねて位置を保ち得るや、余力を何事かに発せんとし、或は小人閑居して不善を為すの行動に出て、不急の土木を興し、無用の戦端を開き、或は倉稟実ちて礼節を知るの態度に傾き、自ら奉ずる欲念を制し、衆と共に楽み、衆と共に憂ふ。
経過は必ずしも予想せらるゝが如くならず、有害なるべくして案外に利益を残し、有利なるべくして案外に禍害を残すこともあるも、後より顧みて善悪正邪を判断すべし。
当世に害毒を流し、後に永く之を及ぼすと、当世に利福を布き、後に永く之を及ぼすと、優劣を決するに少しの惑ふべき無し。歴史の知る限りに於て政治道徳の高低の明白なるを覚ゆ。
「政治道徳の絶頂」三宅雪嶺
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