神の智者ソロモン曰はずや、智慧多き処に憤激多く、智慧益す時に憂怨益す。又曰く神は富、財、位を以て人に与へ、其心の慕ふ所一個も其人に欠く無からしむるも、神まだ其人に之を食ふを得せしめずして、他人の之を食ふ事あり。是れ空なり悪き病なりと。是智者と富者と異類にして同帰なるを示すものに非ずや。黄金を掘るもの巨万の得て足らず、巨万に巨万を重ねて猶を足らず、遂に地球を洞鑿し、他の世界に至りて満足するとも、其幸福は何処にあるや。ソロモン亦曰はずや、「神を恐るゝは智慧の始なり」と、此の智慧を離れて他の智慧に走り出て、却て其智慧の為に捉はれて迷疑の荊棘に陥るに非ずや(115P)